「サステナブル空間賞」受賞!ワールドが展開する可変式店舗「246st.MARKET」で使用されるフレキシブル什器 開発秘話
ワールドグループの株式会社ワールドスペースソリューションズは、 ワールドが 2019 年から手掛けるポップアップ型ストア 「246st.MARKET (ニイヨンロク ストリートマーケット)」において、 日本空間デザイン賞 2021にて 「サステナブル空間賞」を受賞しました。この賞は今年から新設の賞で、“人々にとってより良く持続可能な未来の実現に貢献する”作品が対象となります。
今回は、受賞の要因でもある可変式什器を手掛けた建築家の百枝 優 (ももえだ・ゆう)氏と株式会社ワールドスペースソリューションズのプロジェクト責任者である丹生博之(にう・ひろゆき)氏にお話を伺いました。什器のアイデアソースは、お弁当で使用される“アレ”でした。
■新たな価値を生む什器を作るため、建築家である百枝さんに依頼しました(丹生)
――まず、この什器を制作することに至った経緯を教えてください。
丹生:什器を作る場合、これまでであればインテリアデザイナーに依頼をしていました。ただ、インテリアデザイナーの場合、既存のものに対して、色を変えたり、素材を変えたりといった表層的な発想が多かったんですね。新たな価値を生む什器を作るのであれば、やはり構造自体を変えないといけないと思ったんです。であれば、構造から考える建築家に依頼しようと。そこで、うちのスタッフに気になる建築家を10名ほどリストアップしてもらい、それぞれの作品を見ていきました。その中で興味深い作品を多数作っていたのが、百枝さんだったんです。ちょうど同じ時期「246st.MARKET(※1)」を開催することになったんです。そこで、このイベントで使用する什器を百枝さんに相談させていただこうと思い、福岡の事務所へ行きました。
――百枝さんはこれまで什器をデザインしたことはあったのですか?
百枝:什器自体はこれまでも作ったことはあるんですが、什器だけで空間を作ったことは今回が初めてでした。丹生さんから、什器のご相談された時に、いくつかのお題がありました。その中のひとつとして“サステナブルな要素を取り入れたい”と。その時にお話しされていたのが、平安時代末期から鎌倉時代にかけて活躍した日本の歌人である鴨長明(かものちょうめい)の住まい、方丈庵でした。方丈庵というのは、その名の通り、方丈(約3メートル四方)の小屋なんですが、どこにでも移動できるようにと、組立て式になっているのが特徴です。この方丈庵の現代版を什器としてできないかというアイデアをいただきました。
――なぜ方丈庵を例に挙げたのでしょうか?
丹生:「246st.MARKET」はポップアップイベントとしてあらゆる場所で開催をすることを想定していたので、方丈庵のように組み立て式が理想でした。またサステナブルという点がポイントだったので、色々なアイデアを出しつつ、最終的には百枝さんなりのサステナブルな什器を作ってもらいと思っていました。依頼をさせていただいてから、プレゼンまでの期間がかなり短かったのですが、プレゼンで什器の説明を聞いた時はとても感動しました。
百枝:資料として用意したのが、お弁当のおかずを仕切るバランでした。
丹生:資料を拝見した時に、おかずがバランで仕切られたお弁当のイメージがあったんです。最初はよくわからなかったんですが、バランを例に出して説明をされている時に“等価”という言葉を使われたんです。幕の内弁当って色々なおかずが入ってますけど、何かが突出しているわけでなく、すべてがメインになっているじゃないですか。これってECでも同じことがいえると思うんですよね。ECで買い物をされる方って多いと思いますが、100円の商品もあれば、何十万という高額な商品もありますよね。しかもそれが同じワンクリックで買えるわけです。百枝さんが見せてくださったお弁当のイメージを見て“ECをリアルにしたらこういうことなんだな”って思ったんです。
――値段やジャンルはバラバラでもこの什器を使うと“等価”になるということですね。
百枝:そうですね。またサイズやジャンルの異なる商品でも対応できるようにという点にもこだわりました。組み合わせる板の角度を変えることで什器の形も変わるので、アクセサリーのような小さいものから、洋服のような大きなものまで、あらゆる商品にフィットできるようになっています。
■愛着を持って長く使うことも、サステナブルの大事な要素(丹生)丹生:この什器は、可変式ということでコンパクトに折りたためるのもポイントです。400平米くらいのイベントをやる場合でも、4トントラック1台で什器がすべて運べてしまうので、運搬もとにかく容易です。
百枝:まさに方丈庵のアップデイト版ですね(笑)
――可変式であり、持ち運びにも優れている。サステナブルな什器ですね。
丹生:もちろんそういった意味でサステナブルだと思いますが、もう一つ大事なポイントがあります。長く使えるということです。長く使えるということは、ゴミが出ません。そして資源も無駄にしません。実際「246st.MARKET」はこれまでに4回開催していますが、同じ什器を使い続けています。愛着のあるものを長く使い続ける、これもサステナブルの大事な要素ですよね。もちろんこれからもメンテナンスしながら、この什器を大切に使い続けるつもりです。
「246st.MARKET」とは
ワールドが2019年から手掛けるPOP-UP型ストア「246st.MARKET(ニイヨンロク ストリートマーケット)」は、ファッションの発信地として時代を築いてきた青山通り(246)に位置するワールド北青山ビルを拠点に、様々なデザイナーやクリエーター(作り手)と生活者をつなぎ、未来を創造するプロジェクトです。
サステナブルな視点を持つファッション、コスメ、雑貨、アートまでワールドがキュレーションをしたブランドを取り揃え、可変式の什器に商品を配置しながら、デザイナーやクリエーターは来場したお客様に自分たちの想いを伝えながら販売をすることで、会場内で新たな出合いが生まれていきます。
※「246st.MARKET」公式ウェブページ https://www.246stmarket.com/
ポップアップ什器デザイン
建築家 百枝 優 (ももえだ・ゆう)氏
百枝 優氏 プロフィール
百枝優建築設計事務所主宰。
九州大学非常勤講師。
1983 年長崎に生まれる。2006 年九州大学芸術工学部卒業。
2009 年横浜国立大学大学院 / 建築都市スクール Y-GSA 修了。
隈研吾建築都市設計事務所勤務の後、2014 年百枝優建築設計事務所を設立。
主な作品に「Agri Chapel」「Four Funeral Houses」「Farewell Platform」など。
主な受賞歴としては、AR Emerging Architecture Awards 準大賞、Leaf Awards準大賞、日本建築学会作品選集新人賞、芦原義信賞、
DFA Design For Asia Awards 大賞がある。
株式会社ワールドスペースソリューションズ
プロジェクト責任者 丹生 博之(にう・ひろゆき)氏
丹生 博之氏 プロフィール
1987年(株)ワールド入社。神戸本社で装工部に配属。
専門店様に向けたオンリーショップなどの店舗設計を経て、サービス部、
(株)ワールドヴィジュアルティー・シー・シー・で空間設計を手掛ける。
1996年には当時駅立地において初となるアパレル業態、渋谷・東急東横「インデックス」を、1998年には編集型大型ストアの先駆け「オペーク」の設計企画を。
2000年からは新規事業の開発に携わり、現在はクリエイティブ人材のディレクションのほか、ワールドグループのノウハウを活かした外販事業でプロデュースを手掛ける。
■ 関連プレスリリース:ワールドが展開する環境をテーマにしたPOPUP型ストア「246st.MARKET」 日本空間デザイン賞2021、今期新設の「サステナブル空間賞」受賞
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000930.000002439.html