WORLD meets Chateraise(シャトレーゼ)~YATSUDOKIプロジェクトの裏側に迫るスぺシャル座談会 前編~
ワールドグループの様々な事業やブランドを手掛ける中で培ったノウハウを活かして、お取引企業と共にコンセプトメイキングからクリエイティブまであらゆるビジネスをデザインするプラットフォームディレクションの外販事業。異業種企業とのお取組みの背景には、どのようなストーリーがあるのでしょうか。
今回は、株式会社ワールドプラットフォームサービス プラットフォームディレクション部がインテリアディレクション・プロジェクトの推進・VMD・グラフィックデザインとトータルでデザインを手がけた株式会社シャトレーゼのスイーツブランド『YATSUDOKI(ヤツドキ)』のブランド誕生秘話に注目。
2019年秋に銀座7丁目に1店舗目をオープンし、現在は20店舗以上を展開する「YATSUDOKI」における株式会社シャトレーゼとプラットフォームディレクション部との取組みについて、両社のプロジェクトメンバーの皆さんに立ち上げ時のお話をお伺いいたします。
左から)株式会社シャトレーゼ 白須 暁様、ワールドプラットフォームフォームサービス 長谷川 信一郎さん、同・栗原 有希さん、株式会社シャトレーゼ 藤森 和也様、同・秋元 玲央様 山梨県のシャトレーゼ本社にてはじまりは八ヶ岳
―――YATSUDOKIの1号店が銀座にオープンしたのは2019年9月ですね。プロジェクトスタート時のことを教えてください。
長谷川:ちょうど4年前ですね。実はお仕事をご一緒する1年前位にプライベートで八ヶ岳の工場見学に行ったことがありました。お目当てはアイスの食べ放題だったのですが(笑)、帰りに買ったワインやお土産がとても美味しくて。
それまで店舗には行ったことがなかったけれど、その時に初めてお店も含めて「シャトレーゼ」を認識しました。その1年後、当時は想像もしていなかったのですがご縁が生まれて。
藤森:それは運命ですね! 嬉しいです。
長谷川:それもあって、シャトレーゼといったら八ヶ岳の印象が強かった。それで、直感的に「まずは八ヶ岳を感じないと」と思って、プレゼン前にクリエイティブメンバーと共に行きました。
白須:最初のプレゼンの時に、実際の木や葉っぱなど八ヶ岳の自然のものを持ってきてくれましたよね。
長谷川:はい、それがヤツドキのロゴのベースです。ロゴに使っている木は、まさにその時に拾った木。インスピレーションを感じて持ち帰った3本を組み合わせてロゴになりました。
額装されたロゴの木は、1店舗めの銀座7丁目店に飾られた後、現在はシャトレーゼ本社ビルで保管されている
白須:八ヶ岳の木を使った漢字の「八」をモチーフにしたロゴデザインと「YATSUDOKI」というブランドネームを提案頂いて、「これだ!」と思ったことを覚えています。
長谷川:プレゼンの時、持ってきた木を八の字に並べたら、クリエイティブディレクターの丹生さんが「下にもあったら、いろんな角度から見えるし、どこから見ても八になる」と1本足したんですよね。
白須:まさに「三喜経営」ですね。シャトレーゼは「三喜経営に徹しよう」という社是で、お客様、お取引先様、社員、それぞれに喜ばれる経営をしていこうという意味を持っています。それもあって、3つという数もバチンとはまりましたね。
株式会社シャトレーゼ 執行役員 白須 暁様の当時を振り返る言葉には熱がこもる。―――「YATSUDOKI」というブランド名の生みの親は栗原さんだとか。どこからその言葉が降りてきたのでしょうか。
栗原:子供の頃、「おやつ」の語源は「八つ刻(やつどき)」という江戸時代まで使っていた時刻の言い方から来ているということを聞いたことがありました。今でいう14時~16時くらいですね。
私は時代小説が好きなのですが、江戸時代の町人の話に小腹の空いた八つ刻に何かを食べるシーンが出てくるんです。それで、プレゼン前に隣でメンバーが「おやつの時間!おやつの時間!」と言っているの聞いて、「おやつの語源って八つ刻ですよね」と言ったら、そこから一気に「それだ!」となって。あの一言がまさかこんなに大きなことになるなんて。ちょっと怖かったですね。
長谷川:うん、これ以上ないタイミングで、あれよあれよという内に。確かにちょっと怖いくらいでしたよね。
ブランドネームは栗原さんのふとした一言から。
キックオフからオープンまで、全員で走り抜けた怒涛の3か月
―――プロジェクトがスタートしてから新ブランド立ち上げの店舗のオープンまで3か月。急ピッチで進んでいったと思いますが、具体的にはどのように進めていったのでしょうか。
白須:我々は、店舗をはじめとしてホテルやワイナリーなど様々な業態をやっていますが、新ブランドの立ち上げはこの時が初めてで、ご提案をいただいたその日にご一緒しようということになりました。良いと思ったらすぐにやる社風で、「Do!Do!Do!」と言っていますが、決めたらとにかく早いですね。ご提案頂いたコンセプトもワードも全てが私たちの想いと噛み合ってブレがなかった。そこがご一緒する決め手だったと思います。
長谷川:とにかくものすごいスピードで進んでいきましたが、意思が明確であることに加え、「八ヶ岳」というキーワードもありクリエイティブは進めやすかったですね。
最初のプレゼンの資料で互いにしっかりと目線が合った白須:「YATSUDOKI」は、世界観をしっかりと作りこんだ上でブランドを立たせていった。ブランドを形作る上で、コンセプトや想いを表現するVMDの考え方やパッケージ、リーフレット等のコミュニケーションツール、メッセージの伝え方まで、トータルで創っていくプロセスがとても勉強になりました。
秋元:私はパッケージデザインを担当していたのですが、立ち上げ時期にどれくらいのパッケージデザインをやったのかと履歴をみたら、60~70品にのぼりました。ひと月の間にそれだけの数を入稿したのは後にも先にもありません。何とかオープンに間に合わせなくてはという一心で、凄い経験をしました。
株式会社シャトレーゼの秋元玲央様は、当時パッケージデザインをご担当。
長谷川:毎日ひたすら入稿してましたね。僕も人生の中であんなに入稿した日々はありません。パッケージは前もってやらないといけないので、よく間に合いましたよね。
商品の良さを引き立たせるシンプルかつ美しいパッケージ栗原:イラスト一つとっても結構調整が必要ですから、何か落としているのではないかとハラハラしました。
藤森:私は当時の上司と共に中心となってプロジェクトを進めていましたが、販促も設計も商品開発も、様々な部署が協力し合わないと、とてもじゃないけれど9月には間に合わなかった。新しいブランドを立ち上げるのは初めての経験だったので、どういうことなのか手探りをしながら全員で走っていった感じです。
株式会社シャトレーゼの藤森 和也様は、プロジェクトを中心となって推進。白須:VMDのご提案も7月、8月に進めつつ、商品が決まらないとディスプレーする什器の仕様も決まらないので、商品開発もパッケージも全てが同時並行でした。今やろうとしても、できないんじゃないかな。(笑)
藤森:VMDでは田崎さん(プラットフォームディレクション部)が私の師匠でした。うちにはなかった概念のウィンドウディスプレーとか、まさに空間の魔術師ですよね。什器もYATSUDOKI仕様に変える必要があったし、チーム全体でいろんな方にいらしていただいて、本当にお世話になりました。
―――後半へ