WORLD meets Chateraise(シャトレーゼ)~YATSUDOKIプロジェクトの裏側に迫るスぺシャル座談会 後編~
ワールドグループの様々な事業やブランドを手掛ける中で培ったノウハウを活かして、お取引企業と共にコンセプトメイキングからクリエイティブまであらゆるビジネスをデザインする株式会社ワールドプラットフォームサービス プラットフォームディレクションの外販事業。
前回に引き続き、プラットフォームディレクション部がインテリアディレクション・プロジェクトの推進・VMD・グラフィックデザインとトータルでデザインを手がけた株式会社シャトレーゼのスイーツブランド『YATSUDOKI(ヤツドキ)』のブランド誕生秘話の後編をお届けします。
左から)ワールドプラットフォームフォームサービス 栗原 有希さん、 株式会社シャトレーゼ 秋元 玲央様、同・藤森 和也様、同・白須 暁様、ワールドプラットフォームフォームサービス 長谷川 信一郎さん、 山梨県のシャトレーゼ本社にて共通項は‟現場感”
―――前編では、プレゼンの際のエピソードからコンセプトメイキングまでお伺いしてきました。かたやスイーツ、かたやファッションを中心とする異なる業界の企業同士でプロジェクトを推進する上で、どのようにコミュニケーションをとっていったのでしょうか。
藤森:異業種ではありましたが、目線を合わせてやるべきことに向かっていたので自然とコミュニケーションは取れました。ワールドは様々な現場でお仕事をされているので現場感があり、共通言語で話せる部分も多かったです。
長谷川:そうですね、異業種ではあるけれど、基本的な考え方においては共通していることが多かったですね。
白須:お会いする前はアパレルの企業という印象でしたが、お会いしてお話をお伺いすると様々な事業があり、自社でゼロからブランドを立ち上げて、運営も自分たちでされていると聞いて納得しました。企画だけをやっているところとは全然違う、と。
藤森:他企業とご一緒する場合、我々の考えや想いをご理解いただくのに時間がかかることも多いんです。企画やアイデアのみご提案いただく場合には、現場的に結構ズレが出てくることもありますし。そういう意味で、このプロジェクトにおいて違和感ややりづらさを感じることはありませんでしたね。
秋元:ご一緒しながら、長谷川さんをはじめ、たぶん私たちの知らないところでシャトレーゼのことを勉強して下さっているのがわかって。伝えたことをすぐに理解してくれていました。
1店舗目のYATSUDOKI 銀座7丁目店。BGMには八ヶ岳で録った自然の音が流れる。デザインのインスピレーションは「美味しい!」から
栗原:YATSUDOKIのプロジェクトは、仕事の進め方が特殊でした。通常の業務では、私は基本的にはグラフィック制作のみなのですが、このプロジェクトでは図面を見ながらその場で具体的にサイズやディテールを決めながら進めていきました。VMDとグラフィックの間のような仕事の仕方というのでしょうか。初めての経験で、正直結構こんがらがっていたのですが、とても良い経験になりました。
白須:あのスピード感でそれはこんがらがりますよね(笑)。
長谷川:そんな中、僕は食べてばかりいました(笑)。
藤森:このパッケージはこれで、とか。そういうことも含めてね。
長谷川:そうそう、そういう意味です。パッケージを確認するだけではなく、実際に食べることってとても大事なんです。パッケージに触れて、空けて、味わって、美味しいと「これだ!」という具体的なイメージが沸いてくる。ここだけの話、これまでのデザイナー人生の中で美味しくなくて筆が進まなかったということもあるので。そういう意味では、YATSUDOKIもその他のシャトレーゼの商品も、美味しくて仕事がはかどる。いつもありがたいです(笑)。
栗原:あの時はよく食べましたね。長谷川さんに「食べ終わってもパッケージは捨てないように!」と言われながら。長谷川さんの机のまわりはパッケージだらけでした。
秋元:そうなりますよね。あれだけの種類(60~70種類のパッケージ)を短期間で作ったので。私も包材の調整で、時間もないので愛知のメーカーさんのところに飛んでいって直接修正したり、毎日毎日そんな感じでした。
物理的には「無理」。でも、やれば「できちゃう」
―――1店舗のオープンまでが3か月、その後も立て続けにオープンが決まり、プロジェクトが同時進行していたそうですね。
白須:業界の人だとわかるのですが、あの同時進行は正直あり得ないんです、物理的に。
長谷川:そう、物理的に間に合わないので「できない」と考えるのがほとんどですよね。
白須:でも、普通に考えたらあり得ないからやっていないというだけで、やってみたら「できちゃう」ということもあるんです。「無理かもしれないけど、やってみる」というのはシャトレーゼの社風だと思います。
―――シャトレーゼは、1954年の創業以来、工場直売店やECの導入に先んじて取り組み、さらにはホテルやワイナリー、美術館まで様々な事業を進めています。新しいことに果敢に取り組む企業風土があるのですね。
白須:現状に甘んじずに、新しいことをやる、それも自分たちでやるので早いということはあります。創業者もイノベーターなので。YATSUDOKIは今は国内25店舗になりました。海外はドバイとシンガポールにあります。
いい仕事は、机上じゃなく現場から生まれる
―――では、最後にこのプロジェクトを通じて感じた学びと、気付きをお一人ずつお願いします。
栗原:私は、外部の方とのお仕事はこのプロジェクトが初めてで、様々な気づきがありました。社内では暗黙知もあり、ある程度予測できることも多いのですが、それがないので。これまでの経験を活かしながら提案をして、受け入れていただいたり、異なる視点のご意見を頂いたりするのは非常に貴重な経験でした。
秋元:初めてお仕事をする中で、シャトレーゼのことを上手く伝えることが自分の中でとても難しいと感じた点でした。もっと自分の会社のことを知り、伝えられるようにならないといけないと感じるようになったターニングポイントがこのプロジェクトだったと思います。成長するきっかけをいただいたという意味でも本当に良い出会いでした。
藤森:YATSUDOKIを立ち上げた経験が自信につながって、その後新しいことに挑戦することに抵抗がなくなりました。それは今にも生きています。入社以来、シャトレーゼのことしか知らなかったけれど、田崎さん(藤森様と一緒に店舗VMDを担当。藤森様曰く「師匠」)に怒られたり(笑)、本当に勉強になりました。
白須:田崎さんに弟子入りしたからね(笑)。
藤森:その後オープンした店で、ディスプレーを褒められた時は本当にうれしくて。「もう大丈夫。僕がいなくても」と言ってくださった。ずっと同じ場所で同じことをやって満足するのではなく、いろいろな人と出会って、様々なことにチャレンジしたことが自信につながったのだと思います。
長谷川:これまで様々な方とお仕事をしてきましたが、やっぱり人とのつながりが一番ですよね。ちゃんとコミュニケーションを取って、お客様にとって素晴らしいものを提供していく。会社の垣根を越えて、現場の皆さんともご一緒に。もう、僕の中ではファミリーですし、そう思えるくらいにいい形で取組みをさせていただいたことが何よりです。
白須:やはりワールドは自社ブランドをたくさん立ち上げているので、ブランドを創っていくということのなんたるかがわかっていらっしゃる。そこにリアリティがあって、現場まで浸透させられるというところが大きな学びでした。あとは、社風が似ているところもあって、机上だけじゃなく現場や現場に近いところで意見交換ができる。プランを作りこみ過ぎず、やってみることで生まれる何かがあって、そういうことって必要だよな、と改めて思いました。長谷川さんがおっしゃったように、最終的には人だと思います。相手のパッションを感じて、自分も同じ熱量で返せるかどうかって一番重要ですよね。互いのパッションの通じ合いがすごく良かったし、今後もこういう風にやっていきたいと心から感じました。
長谷川:実はこの話、まだまだ序章なんですよね。オープンしてからもいろいろあって、物語は続いていくんです。
白須:コロナ禍にオープンした店の話とか、テレビで取り上げていただいた時の話とか。それは、いつか第二弾があれば(笑)。